研究紹介

ホルモンに秘められた謎をひも解くと、医療の新たな可能性が見えてくる。

薬学部健康生命薬科学科
森山 賢治 教授

多くの命を救ってきたインスリンをはじめ、医学の進歩に大きく貢献してきた「ホルモン研究」。
森山教授もまた、ホルモンに秘められた新たな作用の発見や解明に力を注ぐ研究者の一人である。

研究というと難しく聞こえるが、テーマはとても身近なもの。
例えば、思春期になると身長に男女差が生じてくるのはなぜか。
当たり前に思えるけれど、その原理はまだ十分解明されていない。

そこで研究室では、月経(生理)の時に増加するホルモン「エストロゲン」が骨の成長に影響するのではという仮説を立て、学生へのアンケート調査を実施。
すると生理不順の学生の多くに身長の伸びが確認され、マウスを用いた実験においても同様の結果が得られたという。
そこからさらなる疑問が生まれた。
なぜ女性は月経(生理)によって身長を止める必要があるのか。
そこには必ず理由があるはず。
この謎を解き明かせば、様々な生理現象の原因究明や疾患の新たな治療法につながるかもしれない。
取り組む研究はそれだけではない。

成長ホルモンは長生きする、痩せるなどの作用・効果が得られるのだが、同時に悪性の細胞にも作用して「がん」を作ってしまう。
メリットとデメリットを作用的に分離するためにも、まだまだ深く調べる必要があるのだ。

「研究はいわばSNSの“~やってみた!”のようなもの。学生と一緒に研究を楽しみながら、一歩でも二歩でも科学を前に進めていきたい」。森山教授は柔らかな笑顔で語った。

PROFILE

島根医科大学大学院医学研究科博士課程修了。
医学博士・薬学士。
現在、武庫川女子大学薬学部健康生命薬科学科教授。
専門分野は、脳下垂体や副腎、卵巣など体の各所で分泌される「身近なホルモン」の研究。
DNAから臨床分野まで広く研究し、新たな治療法の発見や医薬品開発に挑んでいる。