研究紹介

閉経後女性の骨粗鬆症予防を目指して

食物栄養科学部 食物栄養学科
仲谷 照代 教授
専門分野:食品機能調理学、分子栄養学、生体機能学
閉経後の女性に多発する骨粗鬆症

 骨量が減り、骨がもろく骨折しやすくなる疾患・骨粗鬆症。現在、国内の骨粗鬆症推定患者数は約1,590万人(40歳以上)といわれており、うち女性が1,180万人を占める。
特に閉経後の女性の骨粗鬆症の有症率は非常に高く、骨折をきっかけに寝たきりになる患者が少なくない。
これは閉経により女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が低下することにより、破骨細胞(骨を壊す:骨吸収)の働きが過剰に活性化し、骨芽細胞(骨を生成する)の働きを上回り、骨密度が低下することで起きる。
ただし、その詳しいメカニズムはまだ解明されていない部分が多い。

骨粗鬆症のメカニズム

骨髄中のメカニズムを追究

 仲谷教授は海外での研究中、転写因子MEF2Cが骨芽細胞において骨吸収に関わる酵素の発現増加に関与することを明らかにし、2017年に論文を発表した。

 さらに独自のアイデアで研究を続け、大学内のpilot grant fundingを獲得した。2018年帰国し武庫川女子大学に入職。学生への指導のかたわら研究を続け、2022年度に科研費を獲得した。「教員としての多忙な業務はありつつも、この研究を何としても仕上げたいという気持ちでした」
「このプロジェクトは骨髄中のメカニズムを見ています。骨髄中には骨もしくは脂肪の生成に関わる幹細胞があり、何らかの刺激を受けて各々の細胞に分化します。加齢とともに脂肪の生成が増え、骨の生成が疎かになることは当時から知られています」 現在も続く研究では、閉経に伴うエストロゲン低下が骨髄または骨細胞内で標的としている転写因子の増加を引き起こし、破骨細胞の活性化や骨形成バランスなどに影響を与え、骨粗鬆症へ導くという仮説を立案。その検証のため、細胞やマウスを用いた機能解析や骨表現型の解析などを続けている。

遺伝子表現を解析する試料作成

未病のうちに骨粗鬆症を予防したい

 仲谷教授が重要視するのは、未病のうちに疾患を防ぐこと。そして研究は人の役に立たないと意味がない」と断言する。「私は私たちの体の中で起こっている様々な生命活動がどのように行われているのか、そのメカニズムを考えるのが大好きで、その解明に関わる研究にならいくらでも没頭することができます。例えば、転写因子が必要なDNAに結合し、人体に影響を与えるメカニズムは本当に巧みです。人の体内では私たちが想像する以上のことが起きています。そのすごさに今も毎回感動します。このような研究で得られた成果を人のために貢献できるようにしたいし、そうあるべきだと思っています。」

 骨粗鬆症の発症メカニズムにおいて、仲谷教授の仮説どおりに標的としている転写因子が関与しているならば、骨髄内での各細胞の分化ポイントの一端が明らかになり、いずれは人々の日常生活の中で骨粗鬆症を予防することも夢ではなくなる可能性がある。 「それが食べ物なのか、運動なのか、それとも他の要因なのか、まだ不明ですが、日常生活の中で予防につながる方法が見つかれば、骨折から寝たきりになる人を減らすことができます」

 今後の展望として、仲谷教授は標的転写因子が閉経後の骨粗鬆症だけでなく、骨も含めた他の疾患に関与している可能性も視野に入れた研究を検討している。 「この研究を前進させるためにも、遺伝子改変マウスでのサンプル分析の設備が整っており、可能であればテクニシャンが在籍されている大学・研究所・企業との共同研究を希望しています。研究のポイントとなる部分はすでに見えていますので、人に役立つ研究成果を挙げるためにもお力添えをいただきたいです」

PROFILE

大阪市立大学大学院 後期博士課程修了。博士(学術)。管理栄養士。