研究紹介

レモンエゴマを化粧品に!日本固有植物由来精油の皮膚生理効果の探索

薬学部 健康生命薬科学科
仁木 洋子 准教授
薬学部 健康生命薬科学科
仁木 洋子 准教授
専門:化粧品科学、皮膚科学、色素細胞学
地域創生を目指して

 兵庫県丹波地方では、地域住民の高齢化や人口減少に伴い、林業を始めとした地場産業の担い手不足が深刻化している。林業の停滞により、山の整備が行き届かなくなることで、水害等のリスクも高まる。そこで、地方創成を目的として、地元の研究所(奥丹波ボタニカル研究所)とタッグを組み、丹波地方に生息する日本固有植物(レモンエゴマ)を使用した化粧品への応用に対する取り組みを始めた。

レモンエゴマ
レモンエゴマの作用を検証

 本研究で着目したのは、レモンエゴマの抗酸化作用だ。肌老化の一要因である「酸化ストレス」に対して、レモンエゴマが有益であると考えた。近年、様々な大気汚染物質が皮膚に酸化ストレスを与えることが明らかとなっている。これは、大気汚染物質が皮膚に付着すると、老化の原因となる活性酸素種(ROS)が皮膚内で増加するためである。大気汚染モデル物質に暴露した培養表皮細胞に対して、レモンエゴマから精製した精油を作用させた結果、皮膚細胞に有害なROSの増加を抑制することが明らかとなった。

 レモンエゴマは、これまで産業利用が進んでいない。植物性由来成分なので、環境にも優しい。今後は、レモンエゴマを使用した化粧品開発も視野に入れながら、さらなる効果検証や安全性確認を進めていく予定だ。

皮膚老化と活性酸素種(ROS)について
大気汚染物質暴露細胞内のROS抑制効果
化粧品業界の発展につなげる

 日本は化粧品大国であるが、大学で本格的に化粧品を学べる場は意外にも少ない。仁木准教授は、化粧品会社で皮膚科学や原料の安全性・有効性評価研究に携わってきた経験を活かし、化粧品科学研究に取り組んでいる。「化粧品会社の中には製品開発はできたとしても、細胞レベルまで突き詰めて効果やメカニズムを実証することが難しい会社も多い。大学の研究室は、メカニズムの解明まで踏み込めるので、化粧品の高付加価値化の研究が可能である。今後は、さらに企業やメーカーとの共同研究を進め、外部の研究部署のような役割を担っていきたい」。

 仁木准教授が目指すのは、化粧品業界全体の発展だ。「日本の化粧品研究レベルは世界トップクラス。さらなる発展のために貢献していきたい。その中で研究室を卒業した学生が武庫女ネットワークを形成して活躍することが一番の夢」と語る。

PROFILE

化粧品メーカー、化粧品原料メーカーで、皮膚科学研究や化粧品原料の開発に携わる。
現在、武庫川女子大学 薬学部 准教授。
皮膚科学、特に色素細胞とメラニン色素、化粧品有用性について研究。