研究紹介

患者さんの思いや生活を大切に、口唇口蓋裂で悩む学童期の子どもをケア。

看護学部 看護学科
北尾 美香 准教授

上唇の皮膚や筋肉、上顎などに裂け目が生じる「口唇口蓋裂」は外表先天異常の一つで、日本人の場合、約500人に1人の割合で出現する疾患だ。
目に見える外表奇形のため、出産直後は、母親の精神的ショックが大きく、心のケアが必要となる。

口唇口蓋裂の患児は哺乳や摂食、発音などに障がいが生じるため、多くの場合、乳幼児期に手術を受ける。
だが、傷痕が残る、歯並びや発音の問題などで、成人するまでの長期間、複数回の修正手術や治療が必要となるケースもあり、体の機能面だけではなく見た目の問題で悩み続ける患者さんも多くいる。

北尾准教授は、臨床現場で看護師や養護教諭として勤務する中で、乳幼児期や、中学生など思春期の患児に関する研究は見られるが、小学校に通う患児への精神的ケアの研究がなされていないと痛感。

そこで、学童期の患児が抱える様々な悩みに対して、どのようなケアが必要かを調査研究している。
「小学校に通い始める頃、外見や発音を気にして悩み始める子どもたちは多い。
治療を頑張った経験が、将来的に生きていく糧になるように心のケアをしたい」と語る。
「患者さんを生活者として捉える」というのが本学部開設の精神であり、教員や学生が共有する姿勢でもある。

北尾准教授は、「病気の回復のためのケアももちろん大切だが、患者さんの価値観や気持ちと退院後の暮らしも考えてしっかりと見つめないといけない」と言う。
その思いこそが、研究の原動力になっているのだ。

PROFILE

大阪大学医学部保健学科看護学専攻卒業後、小児内科で看護師として勤務。
同大学大学院医学系研究科保健学専攻修士課程修了。
養護教諭などを経て、武庫川女子大学で助教として勤務しながら武庫川女子大学大学院看護学研究科博士後期課程修了。
博士(看護学)。乳児期から学童期の疾患を持つ子どもとその家族への支援に関する研究を行っている。