井原西鶴の世界観に迫る。
文学部
羽生 紀子 教授
江戸時代の出版界との関係性と『新可笑記』からうかがえる“売れっ子作家”の世界観。
(武庫川女子大学 キャンパスガイド2024から転載)
“日本初”のベストセラー作家・井原西鶴は、江戸時代における商業出版の発展とともに成長を遂げた一人。
作風は年とともに変化していくが、羽生教授が着目したのは後期の『新可笑記』だ。
元になる「史実」と、それをアレンジした「創作」という、当時定番だった2層構造ではなく、作者のメッセージが行間に織り込まれた“3層構造”になっているという。それは出版メディアに可能性を見いだそうとした、西鶴の挑戦。しかし版元でもあった当時の本屋との関係性を示す史料と照らし合わせて読み解くと、西鶴の一歩進んだ世界観は、本屋にも大衆にも理解されなかったことが見えてくるそうだ。
“売れっ子作家”というイメージや独自の表現手法への自信とは裏腹に、西鶴が直面していた作家としての葛藤、孤独。「追究するほどに、“西鶴熱”が高まっていきます」。