研究紹介

木の色・艶の経年変化から考える、美しくサステナブルな住空間の作り方

生活環境学部
北村 薫子 教授

建築や家具に使われる81の樹種について、 色・光沢の変化のデータを蓄積。

専門は、建築環境工学の中の「光環境」。約15年前から、建築家や研究者が光と建築について考える『光環境デザインシンポジウム』に学会の小委員会の委員として活動しており、国内外の様々な建築物で光空間の実測調査を行っている。そんな北村教授が2017年に始めたのが、建築物の外装・内装や家具の仕上材として使われる木材の経年変化に関する研究。

出発点は、古民家などの仕上材に対する「風合いや味わいが増す」といった視覚的な印象評価への興味だった。

研究室の一角、北窓そばの机上に並べられた約10センチ四方の板は、スギ、ヒノキ、メタセコイヤなど81種。
日々の自然光を記録するとともに、定期的にそれら一枚一枚について色の変化を観測している。外壁材の調査はあるが、仕上材の室内調査は珍しいことから、2022年に建築学会で報告した際、メーカーから「ぜひ続けてほしい」との依頼があった。

さらにその後、日本に数台しかない反射指向特性装置を用い、それぞれの光沢の測定もスタート。
艶が増していく樹種と、表面がまるで傷んでいるかのようにカサカサになる樹種など、変化を分析した。
木材を世界中から輸入している日本では、カーボンニュートラルの実現をはじめ様々な観点から、木材自給率向上と並行して、内装の木質化も推進されつつある。
仕上材に年月が経っても美しく艶やかな樹種を使用することは、ものを大切にすることにも通じる。「住居や家具を作る人、使う人が、何十年経ってもいいなと思える木を選ぶ一助となるよう研究を続けたい」。