お知らせ

【先生の研究力#6】 生活環境学科 多田正治准教授 町家のリノベーションから桜まつりのリニューアル、プロダクトデザインまで。建築の面白さを体現する。

| お知らせ

2024年9月に着任し、京都市内で設計事務所も構える。京都で町家のリノベーションを手がけつつ、紀伊半島南部の和歌山県と三重県をまたぐ熊野地方を中心に、古民家の改修を手がける。並行して、家具などのプロダクトデザイン、熊野市で長年続く桜まつりのリニューアルなど、建築やデザインの領域にとどまらず、まちづくりや地域活性化にも研究を広げている。

研究室の扉を開けると、木製のぬくもりある庇が。室内では、AI音声認識サービスが声に反応して照明の点灯や消灯、冷暖房を調節。アナログなものづくりと、現代的な機能性を備えた個性あふれる研究室だ。将来は物理や化学を専攻しようと思っていた高校生の頃、米国の建築家フランク・ロイド・ライトが設計した私邸「落水荘」に衝撃を受けて建築家を志した。好きな言葉は、オーストリアのハンス・ホラインの名言「すべては建築である」。建築とは、構造物をデザインするだけにとどまらないもの。研究フィールドの広さに通じるものがある。

博士論文のテーマは、「神社や寺の維持管理について」。人口減少が進む中、地方では伝統ある祭りが継承できなくなったり、檀家が減少して寺社仏閣が廃れていったりという事態が起きている。「山の上に神社があっても、現代人が山に足を踏み入れなければ、やがて山道もなくなり、神社の存在もなきものにされてしまう。失われる可能性が高いものを記録し、見過ごされてしまう風景を記録したかった」という。

実測して描いた熊野地方の神社の図面は、社殿の位置や方角、積み上げられた石の大小、境内の木にいたるまで、空間がまるごと記録され、厳かな気持ちにさせられる。熊野地方をはじめとするローカルに注目するのは、東日本大震災やコロナ禍といった体験が原点にあるという。東京一極集中のひずみが露になり、二拠点居住という言葉も生まれ、移住する人も出てきた。「地方を単なる『過疎地域』とひとくくりにするのではなく、都会にはない食や祭りといった伝統文化、暮らしの豊かさの魅力を発信していきたい」と語る。

所属する生活環境学科は、アパレル、プロダクトデザイン、建築やまちづくりなど暮らしを取り巻く環境を学ぶことができる。研究室4年の藤井美和さんは、「服飾も学べるし、生活文化や住空間、いろんな分野から生活を広く見ていけるのが面白いところ。研究室は、プロダクトや家具を作ったり、グラフィックデザインをやったり、いろんなことができる」と語る。桜を楽しむ祭り「桜覧会」で訪れた熊野市で、学生たちはお年寄りと飲んだり、食べたり、歌ったりしながら親睦を深めたそう。「生活していて、目にするものすべてを関連づけて考えられるのが建築の面白さ。大学の外に出て、自立的に行動することの大切さや他者と協働することの楽しさと難しさを、体験しながら学んでほしい」と表情をほころばせる。