お知らせ

第5回サイエンス・コモンズ セミナーを開催しました。

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2025年10月29日(水)に、第5回サイエンス・コモンズ セミナーを中央キャンパス公江記念館(KM館)3階ゲストラウンジにて開催いたしました。本学の教職員・大学院生に加え、学外からも多くの方にご参加いただき、対面10名・オンライン16名の合計26名が熱心に耳を傾けました 。

サイエンス・コモンズ セミナーは、本学が誇る第一線の研究者が、多様な研究テーマを学内外に広く発信する場です。参加者の皆様には、本学の研究に触れることで新たな学びを得ていただき、分野を超えた研究交流や連携の機会を創出することを目指しております。

今回は、建築学部建築学科の宮野順子准教授にご登壇いただき、「隣人と暮らす住まいのかたちーデンマークと日本の事例から」と題したご講演をいただきました。

宮野先生は、訪問されたデンマークのコ・ハウジングについて、多くの写真を用いて紹介されました。
※コ・ハウジング…個々のプライベートな生活空間と、共有のキッチンやリビングなどの共有スペースを組み合わせた集合住宅の暮らし方。住人同士が自発的に交流し、支え合うコミュニティを築くことを目的とする。北欧で生まれ、多世代が共に暮らすスタイルとして世界中に広まっている。

デンマークでは、高齢者福祉の面からも政府の後押しがあり、コ・ハウジングが現在約400コミュニティ、1万戸以上(住宅全体の0.3%)存在すると解説されました。

コ・ハウジングの設計における基本姿勢は、滞在化、見通し、分節の3点をふまえた、“偶然”を起こす設計であると話されました。本格的な設備をもつコモンキッチンや共用のバルコニーによって、居住者が集い滞在する設計となっているとのことでした。また、共用空間とプライベート空間の間に見通しを確保しながらも、交流するか否かを選択できるデザインになっていると説明されました。

また、コ・ハウジングの運営については、コモンミールの頻度や義務の程度がコミュニティにより異なりますが、個人の選択を尊重する文化が見られるとのことでした。居住者会議では全員が納得するまで時間をかけて意思決定を行うそうです。宮野先生は、共同生活の成立には、設計・運営に加え、日々の生活で個人の選択を尊重するデンマークの文化的な次元が不可欠であると強調されました。

そして、日本の多世代型のコレクティブハウス・かんかんの森(東京)の事例について紹介いただきました。共同の食事や掃除のあり方、居住者同士が「距離感を大切にする」傾向についてお話いただきました。

最後に、宮野先生は共同生活成功の鍵は、「共に暮らす仲間を選ぶこと」「個の尊重と共の仕組みを両立すること」「意思決定の文化を育てること」がキーワードであると締めくくられました。

質疑応答では、日本とデンマークの共同生活における文化の違いが話題に挙がりました。また、コミュニティの長期的課題として、高齢化に伴う介護ケアへの対応や、積極的でない居住者をどう巻き込むかという運営上の普遍的な悩みが共有されました。

【参加者の声】

• 将来的にコレクティブハウスに住むという選択肢もあると考える機会になりました。

• 住戸の入口である廊下を共有スペースとして活用し、パブリックとプライベートの中間的な空間として機能させるという発想が大変勉強になりました。共有スペースとしての機能を持たせるために、あえて廊下の位置や設計を変えるという考え方はこれまでになく、新たな知見を得ることができました。

• コ・ハウジングの紹介を通じて、北欧において老若男女が「住まうこと」にエネルギーを注ぐ姿勢や、幼い頃から個が尊重され意思決定を行う文化など、日本との文化的背景の違いが深く印象に残りました。大変示唆に富むご講演でした。

日時 2025年11月26日(水)15:00~17:00
場所 中央キャンパス 公江記念館(KM館)3階 ゲストランウンジ
詳細 https://scommons.mukogawa-u.ac.jp/news/2025/10/29/post_2515/