研究紹介

資源と廃棄の課題を解決する「着るナタデココ」で持続可能な未来を目指す。

生活環境学部生活環境学科
澤渡 千枝 教授

セルロースは植物の細胞壁および繊維の主成分となる炭水化物であり、木綿や麻などにおいて大部分を構成する成分でもある。
微生物が作るセルロースは「バクテリアセルロース」と呼ばれるが、ナタデココは、酢酸菌がココナッツジュースの糖分を吸収して作り出したものだ。

澤渡教授はこの「バクテリアセルロース」からできた繊維を被服に活用する「着るナタデココ」を研究している。
植物由来の繊維は、合成繊維と比べて環境に優しいイメージがあるが、綿の栽培には多くの化学肥料が使われ、虫害を防ぐために大量の農薬も必要だという。
しかし、「バクテリアセルロース」の場合、作る際にも廃棄する際にも環境負荷を軽減できる。
また、繊維の幅は0.1μm程度と非常に細く純度も高い。
当初は、ばんそうこう、保湿パック、靴の中敷きなどのサイズのもので展開を図っていたが、ゼミ生が卒論のテーマに掲げたのをきっかけに衣服を作るという研究が本格化した。

「水素結合で接着できるので、縫製が不要。既存の布とは違った造形表現も可能となる」と解説する。
また澤渡教授は、「バクテリアセルロース」を活用し、大阪・関西万博の共創チャレンジにも参加するという。
森林木材や化石資源を使用せずに、プラスチックに代わる新素材を創るというプロジェクトだ。

現代の資源問題と廃棄問題を解決しサステナブルな未来を目指して、澤渡教授の新たなクリエイティブな挑戦は続く。

PROFILE

武庫川女子大学家政学部被服学科卒業、奈良女子大学大学院人間文化研究科博士課程修了。
学術博士・工学博士。
静岡大学教育学部教授を経て、現在、武庫川女子大学生活環境学部生活環境学科教授。
繊維・高分子科学、被服材料学について研究。